大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成3年(ワ)13522号 判決 1992年8月27日

原告

ハイネス野方管理組合管理者

奥山龍一

右訴訟代理人弁護士

関康夫

被告

髙﨑倢

外二名

右三名訴訟代理人弁護士

土屋東一

味岡良行

主文

一  被告らは、原告に対し、各自別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。

二  被告らは、原告に対し、各自昭和六二年七月一三日から右土地明渡済みまで、一か月金五万一〇〇〇円の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は被告らの負担とする。

五  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求の趣旨

一主文一項同旨

二被告らは、原告に対し、各自昭和六二年七月一日から右土地明渡済みまで、一か月金五万一〇〇〇円の割合による金員を支払え。

三訴訟費用は被告らの負担とする。

四仮執行宣言

第二事案の概要

一本件は、マンションの駐車場である別紙物件目録記載の土地(以下「本件駐車場」という。)の管理者である原告が、被告らに対し、本件駐車場の明渡とともに、不法行為による損害賠償として賃料相当損害金の支払を求めた事案である。

二争いのない事実等

1  原告は、ハイネス野方管理組合(以下「本件組合」という。)の理事長であるところ、本件組合は、左記建物(以下「本件マンション」という。)及びその敷地である中野区野方五丁目八一二番一所在の宅地1056.18平方メートル(以下「本件土地」という。但し、本件駐車場を含む。)の管理を行うため本件マンションの区分所有者全員により、建物の区分所有等に関する法律三条に基づき設立された社団である(<書証番号略>、原告本人、弁論の全趣旨)。

(一棟の建物の表示)

所在

東京都中野区野方五丁目八一二番地一

構造  鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付八階建

床面積

一階 464.57平方メートル

二階 750.90平方メートル

三階 319.27平方メートル

四階 319.27平方メートル

五階 319.27平方メートル

六階 319.27平方メートル

七階 319.27平方メートル

八階 304.39平方メートル

地下一階 467.47平方メートル

2  本件駐車場は本件マンションの区分所有者の共有であるところ、原告は、平成三年三月一七日、本件組合の決議により、管理者として本件マンションの区分所有者のため、本件訴訟を提起する権限を付与された(<書証番号略>、原告本人、弁論の全趣旨)。

3  被告髙﨑倢(以下「被告倢」という。)は、本件マンションで髙﨑病院(個人医院)を経営し、また、被告髙﨑修(以下「被告修」という。)は、同病院の事務長であり、更に被告髙﨑美子は、被告修の妻であるが、被告らは、本件駐車場を病院用として共同使用し、現在これを占有している(現告及び被告修各本人、弁論の全趣旨)。

三争点

被告らの本件駐車場の占有権原の有無及び内容。

なお、被告らは、本件駐車場の占有は、本件マンションの分譲業者株式会社増岡組が作成した原始規約と敷地利用関係を示した別紙図面(二)(<書証番号略>)によって前記髙﨑病院に付与された専用使用権に基づくものであって、これを否定する「ハイネス野方管理規約」(昭和六一年一二月一四日制定。<書証番号略>)は、建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段に違反する旨主張する。

四証拠<省略>

第三当裁判所の判断

一被告らの本件駐車場の占有権原の有無について

1  証拠<書証番号略>、原告及び被告修各本人)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件マンションの敷地である本件土地は、髙﨑保の所有であったが、同人が昭和四〇年一月一六日死亡したため、その妻髙﨑喜久子並びに子である髙﨑優、被告倢及び被告修らがこれを相続した。

(2) 右髙﨑優らは、低層階部分を髙﨑病院が使用することを予定して、本件土地上に本件マンションを建築することを計画し、株式会社増岡組がこれを完成させた。

(3) 本件組合において所定の手続きを経て成立した「ハイネス野方管理規約」(昭和六一年一二月一四日制定。<書証番号略>)一五条においては、被告らをはじめ髙﨑病院の本件土地の専用使用関係につき何ら触れられておらず、また、区分所有者に対し、駐車場の利用について本件組合と駐車場使用(賃貸借)契約を個別に締結することを求めている。

(4) 被告らをはじめ髙﨑病院は、本件組合と駐車場使用(賃貸借)契約を締結していない。

2 もっとも、被告らは、別紙図面(二)(<書証番号略>を根拠にして、本件マンション管理のための原始規約である「ハイネス野方管理規約」(昭和四五年一一月一九日制定。<書証番号略>)では、髙﨑病院のその敷地持分は総数二七六四三〇のうち一一〇五七二を有するものとされており、これは敷地所有権の割合だけではなく、利用権の割合を定めたものであって、その割合につき同病院の専用使用権が存したところ、更に「ハイネス野方・髙﨑病院ビル管理協定」(昭和五八年三月一五日。<書証番号略>)でも右が認められていたから、本件駐車場の使用権原がある旨主張する。

しかし、別紙図面(二)(<書証番号略>)は、それ自体何らかの書面の添付図面であることが明らかであるうえ、前記「ハイネス野方・髙﨑病院ビル管理協定」の添付図面と同じものであって、右原始規約当時のものとはにわかに措信できない。さらに、右原始規約記載の髙﨑病院の敷地所有権の割合がその利用権までも認めたものか疑問があるところ、本件マンションの売買契約書(<書証番号略>)、物件説明書(<書証番号略>)及び「ハイネス野方管理規約」(昭和四五年一一月一九日制定)には、駐車場の点については何ら記述がない。しかも、前記「ハイネス野方・髙﨑病院ビル管理協定」は、本件マンションの区分所有者全員で構成する集会で決議されたものではないうえ、本件駐車場の専用使用権までを認める内容のものとは解せられない。しかして、被告修の供述及び同被告作成の陳述書(<書証番号略>)の内容もあいまいであって、本件では被告らの主張を根拠づける的確な証拠はない。

結局、本件全証拠によっても、被告らの本件駐車場に対する占有権原を認めることはできず、かつまた、被告らの「ハイネス野方管理規約」(昭和六一年一二月一四日制定)が建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段に違反する旨の主張はその前提を欠き理由がない。

二原告の損害について

前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件駐車場を利用するには、本来本件組合の抽選に基づき駐車場使用(賃貸借)契約を締結すべきであること、本件駐車場の所定使用料(賃料)は、昭和六一年八月から五万一〇〇〇円であること、被告らが本件駐車場の使用を開始したのは、本件マンションの一階株式会社サクセスの工事が完成したころであって、昭和六二年七月一三日であることの各事実が認められ、これに反する格別の証拠はない。してみれば、昭和六二年七月一三日以降の被告らによる本件駐車場不法占有による本件賃料相当損害金は、五万一〇〇〇円が相当である。

三よって、原告の請求は主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官河野清孝)

別紙物件目録<省略>

別紙図面(一)(二)<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例